流体力学(前編)を読む 第2回
本書6~7項 連続方程式と運動方程式と状態方程式
・はじめに
当記事では流体の各種物理量がどのようなもので、それらがどのようにして決定されていくかを見ていきます
・本題
流体の具体的な物理量としては大きくふたつに分けられる
(a) 運動学的な量 : 流速
(b) 熱力学的な量 : 圧力, 密度, 温度, 内部エネルギー, etc...
熱力学的な物理量は多岐に渡るが、これらは互いに独立ではないため任意の2つの量を与えればすべてが決まってしまう(らしい)。よって流速の3成分と熱力学の2成分の合計5個の未知数を求めることが、流体の挙動を知ることにつながる。
そしてこれら5つの未知数を決定するためには5つの方程式を解けば良いことになる。ではどんな方程式か?ここで物理の基本法則である各種保存則を利用する。それはすなわち質量・運動量・エネルギーの保存則である。ここで質量とエネルギーはスカラー量だからそれぞれ1つの方程式が、そして運動量はベクトル量だから3つの方程式が得られ、結局合わせて5つの方程式が得られる見通しがつく。
このような方針で得られる各方程式を結果だけ以下にまとめる。
(1)質量保存の法則から導かれる連続方程式
\begin{align}
\frac{\partial \rho}{\partial t} + \mathrm{div}\ \rho {\bf v} = 0 \tag{2-1}\\
\frac{D\rho}{Dt} + \rho\ \mathrm{div}\ {\bf v} =0 \tag{2-2}
\end{align}
上記2式は変形しただけで同じもの。
(2)運動量保存の法則から導かれる運動方程式 ※補遺
\begin{align}
\frac{D\bf v}{Dt}={\bf K}-\frac{1}{\rho}\ \mathrm{grad}\ p \tag{2-3}
\end{align}
ただしは単位質量に働く外力を表わし一般的には重力を表わす。ベクトル量なので3式を得ている。
(3)エネルギー保存の法則から導かれる状態方程式
エネルギー保存の法則は熱力学の法則から得られるが、数学的な取り扱いを容易にするためにバロトロピー流を仮定することが一般的なようだ。ここでバロトロピー流とは密度が圧力だけの関数で表わされる流れをいい、数式で書けば
\begin{align}
\rho = f(p) \tag{2-4}
\end{align}
を満たすような流れのことを言う。特に液体では、気体ではを仮定して扱う場合が多い。
(補遺)運動方程式の導出
いま図のように、体積の流体が加速度で流れている様子を考える。加速度があるということはその方向に力が加わっているということであり、この場合は左側の圧力が右側よりも高く、その差が推進力になっていることを矢印の大きさで示している。また下面に働く圧力は上面に働くものよりも高く、この差分は外力(重力)によって相殺されていると考える。さてこの流体を非慣性系で見たときには、加速度とは反対方向に慣性力が働いているとみなせる。非慣性系ではこの流体は静止しているように見えるため慣性力を含めた各種外力の総和はゼロでなければならない。このことから以下のような式が立てられる。
\begin{align}
\int\int\int_V ({\bf K-a})\rho dV-\int\int_S p{\bf n}dS=0 \tag{2-5}
\end{align}
第1項は外力と慣性力(加速度)が体積の流体に及ぼす力を表わし、第2項はの表面に及ぼされる周辺からの圧力の総和を表わしている。ただしはの外側に向かって伸びる法線ベクトルである。この式にガウスの定理を用いて体積積分でまとめると、
\begin{align}
\int\int\int_V \{\rho({\bf K-a})-\mathrm{grad}\ p \}dV=0 \tag{2-6}
\end{align}
となる。当然の中身はであるから、を代入して最終的に(2-3)式を得る。
\begin{align}
\frac{D\bf v}{Dt}={\bf K}-\frac{1}{\rho}\ \mathrm{grad}\ p \tag{2-3}
\end{align}
・まとめ
以上、簡単にではありますが流体力学の根幹をなす基礎方程式についてまとめました。